校正の仕事が向いているのはどんな人でしょうか。
「思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった…」といったミスマッチを軽減するために、「校正者に向いている人」について考えてみました。
※求人によって必要とされる「資格」は異なりますので、あくまで校正者としての「資質」という観点から述べています。
まず、大前提として
この2つが挙げられます。
いずれも、「長時間」というのがポイント。
この2つを持ち合わせている方は、「校正者に向いている人」第一関門突破と言えるでしょう。
*
次に、「校正の仕事」にフォーカスして、求められる力をみていきます。
- 言葉の「違和感」や、文章の「矛盾」に敏感
例えば、「日本語的にな~んかおかしい?」「あれ?こっちではAって言ってるのに、後でBって言ってるよ?」など。
校正者に対するよくある誤解に、
校正者って、国語の先生レベルの、すんごい国語力が必要なんでしょ…?
というものがあります。
「国語は苦手です!」と自信をもって言いきれてしまう方には、校正の仕事はちょっと厳しいかもしれません。
ただ、国語の高度な知識や、文法的にどうのこうの…を説明できるレベルは、なくても大丈夫なケースが多いです。
→トップレベルと言われる新○社の校閲部や、新聞の校閲記者クラスを目指すのであれば別かもしれませんが。
「なんか、日本語的に違和感があるぞ」ということを嗅ぎ取ることができれば、あとは辞書やネットなどで調べて、違和感の原因を解明していけばよいからです。
書かれている言葉や内容の「なんかおかしい?」に「気づくことができる」。
そこから、
「ま、いっか」と自己解決せず
「面倒くさがらずに地道に調べる」。
この地道な作業をコツコツ積み重ねていける方は、おそらく校正者に向いていると思います。
- 発注者(クライアント)のニーズをくみとれる
校正者を目指す方の中には、
「間違った日本語が許せない。だから、校正者になって正しい日本語を広めたい!!」
という方もいらっしゃるかもしれません。
日本語の知識があり、少しの誤用でも気になるというのは、校正者として素晴らしい強みだと思います。
ただ、国語力に自信がある方ほど陥りやすいのが、
「日本語として間違っている!!」
と、即赤字を入れてしまうこと。
国語力の高い方ほど、「誤り」が許せないのだと思います。
ただ、それは、発注者やクライアントが望んでいる赤字でしょうか?
例えば学校や塾で使う「国語の教材」であれば、「正しい日本語」にする必要はあるでしょう。
しかし、一般的な書籍や販促物などでは、「どのレベルまで赤字を入れるべきか」は、ケースバイケース。
発注者が、「なんでも気になる所は赤字や疑問だしを入れてね」というケースもあれば、
「赤字は必要最低限の明らかな誤りだけでいいよ」というケースもあります。
いずれにせよ、あくまでも書かれている内容は「著者のもの」。
著者の意図をくみ取り、「本当に必要な赤字か?」と一呼吸おいて考えを巡らせることが大切です。
明らかな誤字・脱字は別として、
校正者は書かれている内容を「正しく変える」ことよりも
・読者に著者の意図が伝わるか
・読者が誤解しないか
・読んで傷つく人がいないか
そんな目線での赤字や疑問だしが求められるように思います。
「誤用だ!」と思った言い回しも、もしかしたら著者の意図があったり、時代とともに変化していたりするかもしれませんしね。
実際の現場では、明らかな誤り以外はぐっと飲みこむ、または鉛筆で「一般的には○○とすることが多いようですが、OKでしょうか?」などと書き入れる「疑問だし」にとどめておく。そんな「スルー力」が必要な場面もあります。
- 考えを簡潔に言語化できる
赤字や疑問だしは、読む人(編集者や著者、制作担当者など)が、「え? どこをどう変えればいいの?」となってしまわないよう、わかりやすく簡潔に書く必要があります。
「誰が見てもわかるように書く」ことが鉄則。
意外かもしれませんが、頭の中の考えを、わかりやすく・簡潔に言語化する作文力も、校正者には求められます。
- 集中力と根気を、長時間維持できる
最近はメディアでも校正の仕事が紹介されることも増えてきました。
その際、「この中に誤りが5つあります。どこでしょうか?」と、校正クイズが出されていることがあります。
校正の仕事を体感でき、身近に感じてもらえる良い機会ですよね。
ただ、
「難しい問題もパーフェクトだったし、校正者になれるんじゃない!?」
と思った方は、実際の校正の仕事とクイズは大きく異なる点もあるので、少し注意が必要です。
実際の校正と、上記のようなクイズの大きく異なる点は、
●誤りが何個あるか、わからない
●どこかに必ず誤りがあるとは限らない
というところ。
たとえるなら、
校正クイズ
=「プールの中に小石を5個まいたので、探してください」
実際の校正の仕事
=「大海原に、もしかしたら小石があるかもしれないので探してください」
というイメージでしょうか。
よって、実際の校正の仕事において必要となるのは、以下の能力だと考えます。
存在するかどうかもわかならい誤りや修正すべき箇所を、ひたすら探していく根気
長い時間気を抜かずに、校正紙に向き合える集中力
加えて、「本当にこれで大丈夫かな?」と、手探りで進んでいく不安と向き合う「精神力」も必要かもしれませんね。
以上、「校正者に向いている人」をまとめると、
●長時間、机に向かっていられる
●長時間、文章を読むのが苦にならない
ことが大前提。
さらに、
・言葉の「違和感」や、文章の「矛盾」に敏感
・発注者(クライアント)のニーズをくみとれる
・集中力と根気を、長時間維持できる
という力が求められると考えます。
国語力や語彙力は、日々の努力でも高めることができます。
私も精進を重ねていきたいです!
▼「言葉の誤用センサー」を高めたい方におすすめ▼
毎日新聞・校閲グループ著。
事例写真も豊富なので校正実務に役立ちます。
上から目線ではなく、 「人は誰でも間違える」を前提に書かれているところに共感しました。
「ひと目で伝わるように書く」実例がたくさん▼
「短く簡単な言葉で書くとこんなに伝わりやすいんだ!」という実例がたくさん載っていました。
「パッと見て伝わる校正赤字を書きたい」と考えている人や、ブログやSNSなどで発信している人に、とてもおすすめできる本です。
校正技能検定対策にもおススメ▼
印刷の仕組みや業界の裏側がマンガで学べて、とにかく面白いです。
電車の中で読み、何度もふきだしてしまいました。
印刷ボーイズシリーズ 第二弾▼
校正者や日々言葉と向き合う人に▼
SNSやブログなどで言葉を発信する方にも読んでいただきたい1冊です。