私は校正者になる前、日本エディタースクールの全日制「校正者養成専門コース」を受講しました。
過去の記憶をたぐり寄せ、講義で学んだことを科目ごとに紹介していくシリーズ第2回目は「横組校正」です。
●「これから日本エディタースクールに通うことを検討している」
方はもちろん、
●「どんなことをスクールで教えているのか知りたい」
●「独学で校正の勉強をしている」
といった方々にも、ちょっぴりでも参考になれば幸いです。
「昔、通ってたよー」という方は、過ぎ去りし日々をご一緒に懐かしみましょう。
なお、日本エディタースクール「校正者養成専門コース」のカリキュラム全体像は、以下の記事でご紹介していますので、ぜひあわせてお読みください↓↓
「横組」とは
「横組」とは、日本語の組版において、活字を横にならべて組むこと。
手書きでいうならば「横書き」。
日本エディタースクールの校正者養成専門コース「横組校正」の講義では、横組印刷物の校正について学びます。
日本語で書かれた印刷物は、縦組のものが多いですが、「化学式や数式を扱う書籍」や「参考書」「雑誌」など、横組のものももちろんあります。
また、縦組の書籍であっても、索引ページに関しては、横組にされることが多いです。
WEBサイトは横書きですし、若い人の方がもしかしたら横組に馴染みがあるかもしれませんね。
横組であっても、基本的な校正方法は「縦組校正」と変わりません。
しかし、横組ならではのやり方や注意点もあるため、日本エディタースクールでは「横組校正」の講義でしっかり学んでいきます。
3つに分類されるカリキュラム、「横組校正」はどこにあてはまるのか
日本エディタースクールの「校正者養成専門コース」のカリキュラムは、以下の3つに分類されます。
1 校正基礎科目
校正を行う上での基本的な知識を学び、演習する。
2 校正に必要な編集科目
校正者として知っておきたい編集に関する知識を学ぶ。
3 校正専門科目
さらに一歩進んだ校正に関する知識を学び、演習する。
これらのうち、「横組校正」で学ぶ内容は、「1 校正基礎科目」と「3 校正専門科目」にあてはまります。
次章で、上記の「3分類」とからめながら、講義の内容をもう少し詳しく説明していきます。
「横組校正」講義の内容をざっくり説明
「校正者養成専門コース」の科目の中でも「横組校正」は、「縦組校正」とならんで講義数が多く、みっちりと学習します。
「横組校正」の講義は、内容によってⅠとⅡに分かれており、以下のようなすみ分けとなります。
以下に内容をまとめてみました。
●横組校正Ⅰ(原稿引き合せ)
→「1 校正基礎科目」
原稿引き合せとは、もととなる原稿と、校正刷(校正を行う原稿)を1字1字照合する作業のこと。
横組印刷物の校正作業の流れや、校正記号の使い方、赤字の入れ方を学び、実習します。
●縦組校正Ⅱ(素読み校正)
→「3 校正専門科目」
横組の本・雑誌、索引などについて「素読み校正」を実習します。
素読み校正とは
校正刷だけを点検し、漢字や言葉の間違い、事実関係の誤り、体裁の不備(例:見出しのサイズがここだけ違う…)などを総合的にチェックしていくこと。
さらに、書籍の本文以外の部分も全て確認し、「1冊の本として、おかしなところがないか」をチェックする「まるごと1冊分の校正」も行います。
「横組校正」の講義で使用する書籍
「横組校正」の講義では、以下3つのテキストを使います。
◼️新編 校正技術
「横組校正」の講義では、「講座テキスト版④」(=紫色の冊子)を使います。
■校正練習帳
演習用テキストです。
「横組校正」の講義では、「(2)ヨコ組編」(=オレンジ色の冊子)を使って、実習に取り組んでいきます。
この1冊を全てしっかりやり終えれば、横組校正で用いる校正記号のうち基本的なものはおさえられると思います。
■校正必携
参考書のようなイメージで使います。校正に必要な知識がギュッと詰まっている、内容の濃い本です。
これら3つのテキスに加えて、日本エディタースクールオリジナルのプリント(課題)がどっさり配布されます。
授業中+宿題として家に持ち帰り、毎回授業までに仕上げるのは、かなり大変でした。
私は商業印刷の校正者になったので、今も「横書き」のものを校正することが多く、とてもためになったと感じています。
「横組校正」で得たものを一言で表すと?
「横組校正」で学んだこと。
それは、
「小さな記号やアキ幅までぬかりなく」
です。
「原稿内に書かれている文字やアキ(空白)に、意味のないものはない」ということですね。
横組校正の講義では、単位記号の相違(例:m、㎡、㎥)やアキの幅(例:四分アキ、二分アキ)まで、こまかーーーーーく指導されます。
校正課題のプリントは、細かいところをあえて(いやらしく)間違えており、引っかかってしまうんですよね…
でもこれ、実務に非常に生かされているのです。
先日、わが家のポストに入っていた某大手不動産会社さんのチラシにこんな記載がありました。
子育てしやすい環境です。
・○○小学校 現地から徒歩2分(約160㎡)
・○○公園 現地から徒歩3分(約240㎡)
一見、おかしなところはないように思えるのですが、よーく見ると…
「約○㎡」のところは、正しくは「m」ですよね。
よくよく意味を考えながら見ていくと「あれ?」と思いそうですが、不動産のチラシだと、広さを表す単位などに「㎡」が使われているので、余計に違和感なく感じられ、スルーしてしまうのかもしれません。
原稿内に書かれている文字は、どんな小さなものにも目をこらし、「小さな記号やアキ幅までぬかりなく」と肝に銘じています。